血液検査を行ったら大体必ずRBCという項目があります。
この項目は何の意味を示しているのでしょうか?
数値が高くなったり低くなったりしたら、どのような病気や障害が考えられるの?と思ったり。
病院で血液検査をしたときに結果報告書をもらっても、どの項目が何に関係するのか分からなかったりしませんか?
今回は、RBC(赤血球数)について医学生の方に解説して頂きました。
血液検査のRBC(赤血球数)とは?
血液検査のRBCは赤血球(red blood cell)の値を調べる検査です。
血液の成分の中の血球のほとんどは赤血球でできていますが、赤血球の数が多いと多血症、数が少ない場合には貧血などの病気の可能性があります。
ただし、赤血球の数はあくまで補助として診断に使います。
赤血球数を調べることで、どのくらいの赤血球が存在するかがわかりますが、それだけではピンポイントに疾患を当てることができません。
また、赤血球(RBC)を見るときには赤血球に含まれているヘモグロビンを調べるHbや、赤血球が占める全体の体積を調べるMCVなどの値を見て、総合的に判断します。
赤血球は肺から入ってきた酸素を赤血球内のヘモグロビンと結合することで、体の細胞に酸素を届けます。
ですから、赤血球の値がおかしいと体の中の酸素量まで影響を及ぼすことになってしまいます。
ここで、赤血球(RBC)の基準値を確認してみましょう。
赤血球(RBC)の基準値 | |
---|---|
男性 | 430~570万 |
女性 | 390~520 万 |
このように、男性と女性では値に違いが見られます。
男性は血液を作り出す男性ホルモンを多く持っているため女性より値が高くなり、女性は生理による出血や妊娠によって血が薄くなりやすいです。
また、子供の場合には造血機能が活発ですので、基準値が大人よりも高い600~700万とも言われています。
では、血液検査で赤血球(RBC)の数値が高くなっていた時は、どのような病気が考えられるのかを見ていきましょう。
血液検査の(RBC)が高い時の病気について
赤血球が高いときに考えられる病気は、赤血球の濃度が大きくなる「多血症」です。
「血液が濃い病気」と考えてもらうとわかりやすいです。
ただし、血液が濃いときには
- ①赤血球数が増加
- ②赤血球の数は基準値内で、血漿成分が少ないので濃くなっている(相対性多血症)
のどちらかです。赤血球の数が基準値よりも大きくなるのは①のときです。
さらに、この多血症も2つに分けられます。
- 真性多血症
- 続発性多血症
1つは造血を司る遺伝子が変異したことで、血液を造る力が強くなってしまった多血症です。
この多血症は赤血球を作る機能そのものに異常があるので、「真性多血症」と言います。
もうひとつはタバコや高地生活による慢性的な酸素不足やエリスロポエチンという、赤血球の数を増やす物質を放出する腎臓に腫瘍ができると発症する多血症です。
この場合、造血機能には問題ありませんが、環境や他の疾患によって赤血球が多く作られてしまうので「続発性多血症」と呼びます。
慢性的に赤血球の値が高い場合には「真性多血症」もしくは「続発性多血症」の可能性があります。
この多血症になると、このような症状が現れることがあります。
多血症の症状
- 疲労感
- ほてり
- 顔面の紅潮
- 視界の歪み
など。
多血症の初期で見られやすいのが、視界の歪みや疲労感です。
血液が濃いときには粘性をもちドロドロになり、枢神経系の血液の流れを悪くします。
そうなると、神経が酸素不足になってしまうので疲労感、めまい、視界の歪みなどの症状が出やすい状態になります。
また、赤血球が増えると皮膚が赤くなりやすく、中でも顔は一番はっきりと紅潮します。そして、皮膚の血流が良くなるとその部分がかゆくなります。
しかし、多血症で一番恐ろしいのは血栓ができることです。
血がドロドロしているので血管の中で詰まりやすく、脳や心臓で血管をふさいでしまうと脳梗塞や心筋梗塞になることがあります。
特に真性多血症の人に生じやすいので、他の多血症に比べて寿命が短いことが多いようです。
では、どのような治療方法があるのかを簡単にご説明していきます。
多血症の治療方法
多血症の治療には症状によってもいくつかあります。
一つは多くなった血液を抜く「瀉血(しゃけつ)」という方法です。
血を抜くので抵抗感を感じる方もいらっしゃいますが、定期的に血を抜くと赤血球を基準値内で安定させることができるので血栓を作りにくくします。
また、血液をサラサラにする薬で血栓を作りにくくこともあります。
出血した際に血が止まりにくいというデメリットはありますが、脳梗塞や心筋梗塞などになる可能性が低下します。
先ほどお伝えした続発性多血症の場合は、原因となっているものを改善しなければいけません。
喫煙が原因の場合は禁煙、腎腫瘍の場合は腫瘍の摘出などを行い、増えてしまった赤血球の数を戻すことが出来ます。
しかし、喫煙などの生活習慣を除き、多血症で日常的に気をつけるべきことはありません。
多血症で大事なことは早い段階で気づくことです。
無治療で進行すると数年で亡くなることがありますから、どれだけ早く気づけるかが鍵になります。
疲労感などの多血症の症状を感じたときには血液検査を行いましょう。
次は、赤血球(RBC)の値が基準値より低い場合についてご説明していきます。
血液検査の(RBC)が低い時の病気について
赤血球(RBC)の数が基準値よりも低い場合には、以下の病気が考えられます。
- 鉄欠乏性貧血
- 出血
- 溶血性貧血
- ビタミンB12欠乏(大球性貧血)
- 白血病
赤血球(RBC)が低い場合の治療は、原因となる病気を取り除かなければいけません。
通常の血液検査では関係ない部分もありますが、それぞれの病気について簡単にご説明していきます。
鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血は体内の鉄分が不足する事が原因です。
鉄は赤血球に含まれる大事な材料ですから、鉄分が不足すると赤血球の作られる数が減少します。
爪が反って伸びるスプーン爪や氷や土などを好んで食べる異食症を伴うことがあります。
この場合、血液検査では赤血球の減少のほかに鉄(Fe)の低下が見られます。
女性に多いことが特徴で、ダイエットのしすぎや鉄分の吸収率が落ちることが原因になります。
治療は鉄欠乏性貧血の場合は鉄分の補充を行います。鉄剤の服用やほうれん草などの鉄分が豊富に含まれている食べ物を取ることで、体内の鉄分の増加を促します。
また、鉄欠乏性貧血を起こす場合には、ダイエットや食べ物から鉄分を摂取する機会が減っていることがありますので、生活習慣の見直しが必要です。
殆どの場合、2~3ヶ月もすれば体内の鉄分量は基準値に戻ります。
ビタミンB12欠乏(大球性貧血)
ビタミンB12は赤血球を作るために必要なビタミン
です。
ビタミンB12 が体内で不足すると、十分量のビタミンを取り込むまで赤血球が成長を続けるので、いつもより大きな赤血球が出来上がります。
ただし、一つの赤血球の作られるために、時間がかかるようになりますから赤血球数は低下します。
ビタミンB12欠乏ではビタミンB12の補充を行います。
しじみやレバーなどの食物に多く含まれていますので、血液検査でビタミンB 12の値が低かった人は積極的に摂取してください。
鉄欠乏性貧血と同じように、生活習慣の乱れによるビタミン不足が考えられます。食生活の見直しを行いましょう。
溶血性貧血
溶血性貧血は赤血球が破裂(溶血)することでおきます。
赤血球は風船のような構造をしているので、内部に入ってくる物質が多すぎると膨らみすぎてしまい破裂します。
そうなると中の成分が外に出来てしまい、赤血球本来の働きが失われます。
溶血性貧血を生じる疾患は以下のものがあります。
- 遺伝性球状赤血球貧血症
- 鎌状赤血球症
- 自己免疫性溶血性貧血
- サラセミア
溶血性貧血でも、重症の場合輸血を行う事があります。
ただし、溶血性貧血の多くは難治性の疾患が原因になっていることが多く、極端に赤血球の値が低くない限りは輸血を行うことはありません。
また、溶血性貧血になる疾患の多くは、家族性のものや赤血球の形が異常などの特徴があります。
家族で貧血の人がいないか確認し、血液検査で赤血球の形を調べてもらうと良いでしょう。
出血
赤血球は血液に含まれていますから、ケガで大量に血液を失ってしまうと赤血球の数は減少します。
すりむいた程度ならば出血も少なく、すぐに固まるので赤血球が低くなることはありません。
しかし、交通事故や複雑骨折、帝王切開などの大量出血が起きる手術などでは赤血球の値が一気に低くなります。
出血による貧血が起きた際には、まず止血を行います。
出血をそのままにしていると赤血球が減っていき、チアノーゼを起こして最終的に死に至る可能性があります。
出血がひどいときには輸血で赤血球を体内に入れることもあります。
赤血球がたくさん含まれていますから、即座に赤血球数を戻すことが出来ます。
白血病
白血病は骨髄の異常です。赤血球や白血球、血小板などは全て骨髄から産生されます。
名前の通り、白血病は白血球の異常増殖が起こります。骨髄で白血球の作られる数が増えすぎると、赤血球の作られる場所がなくなってしまいます。
白血病の場合は増殖を抑えるために、抗がん剤などを用いて治療します。
ただし、抗がん剤は正常の細胞にもダメージを与えるので、赤血球の数も減りやすいです。
それ以外にも、胃癌などによる消化管出血や子宮筋腫などの慢性的な出血が長い間続くと、赤血球(RBC)の値が下がることがあります。
まとめ
いかがでしょうか?
女性は特に気になる貧血を主に調べるRBC(赤血球数)ですが、数値が低い場合は鉄分を多く含む食材を食べるようにしたりして日常生活を少し改善してみると体が楽になると思います。
また、数値が高く出る場合は一日の水分量が少ない事もあるので、しっかりと水分を摂るように心がけて血管を詰まらせないように気を付けて下さい。
心筋梗塞や脳梗塞の早期発見にも繋がるので、異常があれば放っておかないようにしたいですね。
<ライタープロフィール>名前 井野
大分大学医学部5年生
正しい医療の知識を多くの人に知って頂けるようにライターをしております。
将来は周産期や小児の分野に進みたいと考えております。