健康診断の結果って気になりますよね。
異常があるかどうかや再検査かどうかはもちろん、毎年、健康診断を受けていれば、数値の変動も気になります。
でも、個々の数値の意味については、よくわからないところも多いですよね。
アミラーゼが高いと言う場合、どんな原因が考えられるのでしょう?
また、症状や病気としてどんなものがあるのでしょうか。
アミラーゼが高い場合に考えられる原因や、症状、病気などについて循環器内科の先生に解説して頂きました。
アミラーゼとは?高い原因は?
検診や病院で血液検査を受けて結果を頂く事があると思いますが、今回はその中の項目の一つであるアミラーゼ、特に高値の場合についてご説明させて頂きます。
アミラーゼは、主に膵臓や唾液腺から分泌される消化酵素で、食物として体内に取り込まれた米やイモなどに含まれるデンプンを分解し、糖に変える働きをしています。
通常、アミラーゼは唾液や膵液中に多く含まれ、その他に血液内や卵巣などにもわずかではありますが存在します。
そして、唾液腺や膵臓がダメージを受けることで、そのアミラーゼは血液中に流れ込み、結果的に血液検査での血中アミラーゼが高値となります。
では、どれくらいの値になれば、血中アミラーゼ高値なのか気になるかと思いますので、下記の正常値をご参照下さい。
この値を超えれば、高値と考えます。
- 血中(血清)アミラーゼの参考基準値 40~125 U/L
(測定の方法により若干変動します)
また、血中アミラーゼは、1/3が腎臓から尿中に排泄され、その他は肝臓やリンパなどの網内系で処理されます。
このため、腎機能が悪くなれば、血中アミラーゼは高値を示すことがあります。
このことより、血液検査でアミラーゼの高値があれば、次のアミラーゼの検査では血清アミラーゼと尿中アミラーゼの両方を測り、診断を行っていきます。
では、ここで血液中のアミラーゼが高値と出た場合、「唾液腺と膵臓のどちらが悪いか分かるの?」と疑問が出てくると思います。
そこで、血中アミラーゼが高値とでた場合、次にその血中アミラーゼのアイソザイムを測ります。
アミラーゼアイソザイムとは、唾液線由来のアミラーゼ(S型アミラーゼ)と膵臓由来のアミラーゼ(P型アミラーゼ)がどれくらいあるかを測定するものです。
- P型アミラーゼは膵臓
- S型アミラーゼは唾液腺
(血液中のアミラーゼの割合は、膵臓由来は約40%、唾液腺由来は約60%です。)
一般的に検査される血中アミラーゼは、このS型とP型アミラーゼを合わせた値となります。
このアイソザイムの検査によって障害部位を推測し、次の腹部CTやエコーなどの画像検査などの精密検査をどのように進めていくか判断し、確定診断を行っていきます。
アミラーゼが高い時に考えられる病気は?
前述したように血中アミラーゼは、主に唾液腺と膵臓の障害により上昇しますので、ここではその障害される臓器に分けて、いくつかの病気とその症状についてご説明します。
【膵臓の病気】
まずは、P型アミラーゼが上昇する膵臓の病気についてです。
よく耳にするのは、膵炎かと思います。
急性膵炎では、ほとんどの方が、持続する腹痛を訴えられます。
腹痛の強さは個人差があり、鈍痛程度の軽い腹痛からじっとしていられないくらいの激痛まで様々です。
痛みは、腹部だけに限らず背中や胸の痛みとして訴えられる方もいます。
そして、痛みの次に多い症状としては、嘔気や嘔吐があります。
その他には、食欲不振や腹部膨満感を訴えられる方や、発熱を伴う場合もあります。
これらの症状を認め、更に血液検査でアミラーゼ(P型アミラーゼ)上昇、画像診断で炎症所見があれば、急性膵炎と診断します。
もちろん、膵炎以外にも膵臓の病気があり、一部を下記にまとめていますのでご参照下さい。
膵臓の病気のまとめ
病名 | 原因 | 症状 |
急性膵炎 | ・アルコール多飲 ・胆石症、急性胆嚢炎など。 ・ムンプス感染症(おたふくかぜ)など。 ・原因不明なことも多い。 | ・腹部の鈍痛~激痛、痛みは胸部や背部に放散することもあり。前屈姿勢で痛みは軽減することもある。 ・悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨満感など ・発熱 ・血圧低下、頻脈など ・重症例では、出血班をみとめることもある。 |
慢性膵炎 | ・アルコールのことが多い。 ・特発性や胆石症、自己免疫疾患など | 急性増悪時には急性膵炎と同様の症状がある。無痛性の場合もあり。 炎症が持続することで膵臓の機能が低下すると、耐糖能障害(糖尿病を含む)、下痢や体重減少などの消化吸収障害など |
膵嚢胞 | ・膵疾患に随伴する場合。 ・腫瘍や寄生虫感染など | 嚢胞が小さい時は無症状。 大きくなれば、腹部腫瘤の蝕知、腹部膨満感、腹痛などあり。 嚢胞が破裂すれば、下血などの消化管穿孔の症状やショック症状を起こすこともあり。 |
膵癌 | (疫学) 50~70歳の男性に多い。 男:女=1.4:1 | 初期にはあまり症状がないため、発見が遅れることが多い。 ・食欲不振による体重減少、全身倦怠感 ・糖尿病症状 ・黄疸 ・上腹部痛 など |
*上記以外にも疾患はありますが、頻度が少ないため記載していませんので、ご了承下さい。
【唾液腺の病気】
S型アミラーゼが優位に上昇する唾液腺の病気についてです。
唾液腺疾患は、急性耳下腺炎(おたふくかぜ)や唾石症などがあります。
耳下腺炎(おたふくかぜ)については、よくご存知かと思います。
症状としては両側または片側の頬のあたりや、顎下にある唾液腺の腫脹(腫れ)、圧痛、嚥下痛や発熱があります。
おたふくかぜはウィルス感染で起こり、潜伏期間は15~21日と長く、発熱は3~4日ほど続きます。
そして、顎下腺の腫れは1週間~10日ほど、長い場合もあり3週間ほど続く方もいます。
また、唾液腺炎はウィルス感染によるおたふくかぜ以外にも、化膿性耳下腺炎や反復性耳下腺炎などもありますが、症状的には同じで、治療方法を決定するためにも精査し診断する必要があります。
その他に、唾石症という病気もあります。
これは唾液腺内に結石ができ、この結石が、唾液腺の排出管の流れを悪くすることで、唾液腺のある下顎などに痛みを伴う腫れが起こります。
ですので、唾液の分泌が増える食事、特に酸味の強いものを摂ると症状が強く出てくることが多いのです。
この場合通常、結石は両側にできず片側だけにできることが多いので、唾液腺の腫れは、ほとんどは片側で見られます。
【その他アミラーゼ高値となる状態や病気】
血中アミラーゼの上昇は、唾液腺及び膵臓の障害を主に示しますが、胃・十二指腸穿孔、腸閉塞や腹膜炎でも高値となることがあります。
また、血中アミラーゼは、その1/3は腎臓から排泄されていることから、腎不全によりその排泄がうまくいかず血中アミラーゼが高値になることもあります。
その他に、一部の肺がんや卵巣がんでアミラーゼを産生することがあり、このようなアミラーゼ産生腫瘍でも血中アミラーゼは高値となることがあります。
そして、病気ではなく体質としても血中アミラーゼ高値を認めることがあります。
代表的なものとして、マクロアミラーゼ血症があります。
これは、血液検査上で血中アミラーゼ高値を認めますが、病気ではないので、この場合は治療の必要はありません。
まとめ
最後に今までのおさらいをしておきましょう。
血液検査において、血中アミラーゼ高値と出た場合、大きく分けて2つの臓器の障害が考えられます。
1つは膵臓の病気で、もう一つは唾液腺の病気です。
膵臓の病気で多いのは、腹痛や悪心・嘔吐の症状などがある急性膵炎で、重症化すれば生死にかかわる病気です。
また、唾液腺の病気で最も多いのが、頬や首の部分の腫れと発熱などの症状がみられる耳下腺炎です。
これら、膵臓及び唾液腺の障害は、症状に違いがあるので診断はつきやすいですが、それを明らかにするためアミラーゼアイソザイムの測定を行います。
これにより、膵臓由来のアミラーゼ(P型アミラーゼ)と唾液腺由来のアミラーゼ(S型アミラーゼ)のどちらが優位に上昇しているか確認し、膵臓か唾液腺の病気かを判断します。
そして、それとともに血液検査でリパーゼなどの測定や画像検査など行い、確定診断をしていきます。
また、膵臓や唾液腺の病気以外の可能性も考え、腎不全などないか、体質的に血中アミラーゼの高値となるマクロアミラーゼ血症などではないかを見極めて最終的に診断を付け、治療を行います。
以上のように、少し聞きなれない血中アミラーゼですが、重要な指標の一つでもあるので注意してみて下さい。
<ライター経歴プロフィール>鷲尾 美香
20年程、循環器内科、総合診療科医として日本で勤務医として働かせて頂き、また海外の医療搬送のお仕事もさせて頂いております。そのため、日本国内だけでなく海外の医療現場にも関わり、沢山のことをさせて頂いています。現在、主人の仕事の関係で海外に拠点を置いておりますが、日本と行ったり来たりで医療に携わっております。また、産業医としてのお仕事をさせて頂き、検診や外来診察もさせて頂いた経験から、検診の重要性を感じております。
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